有名メタルコアバンドのおすすめ名盤&名曲紹介

2016/06/23

アルバムレビュー その他/コラム

メタルコアとは

 メタルコアとは、2000年代に隆盛を極めたメタルのサブジャンルの一つです。(基本的には)北欧のメロディック・デス・メタルの叙情性と、ニュースクール・ハードコアのヴォーカルスタイル、跳ねる質感、およびブレイクダウン等をかけ合わせたジャンルです。(ちなみに、EARTH CRISISやCONVERGEといった硬派なバンドもメタルコアと呼ばれていますが、基本的には別物です。なので、それら90年代のバンドと区別するために、2000年代以降に流行したものをメロディック・メタルコアと呼ぶ場合もあります。)

  ヴァース(Aメロ・Bメロ)でデスボイスと共に疾走、コーラス(サビ)でテンポを落としてクリーンボイスという明瞭なスタイルは、容易にお互いのパートを際立たせる事が出来るために一世を風靡しました。が、メロデスをパクリすぎだとか、曲展開がワンパターンでオリジナリティに欠けるという批判の声も一部からは挙がっていました。また、一時期はメタルコアであるというだけである程度の人気が出てしまうという、粗製濫造と非難されてもしょうがない状態だったのは否めません。

  コアなメタラーからは何かと文句を言われがちなメタルコアですが、個人的には、メロデスが抱えがちな曲全体の盛り上がりに欠けるという欠点を、明確なサビを導入したことでうまくカバー出来ている部分は大きいと思います。単純なリズミカルさとヘヴィさを強調するブレイクダウンについても、ライブでの盛り上がりやすさに関しては他のメタルに無い長所と言えるでしょう。80年代のメタルバンドとは異なるカッチリとした揺らぎの少ないリズム感のバンドが多く、総じてメタル初心者が取っつきやすい特徴が多いです。

  流行の変化や、主要バンドの音楽性の変化or活動休止によって、メタルコアムーブメントはひと段落ついた感があります。この記事では、後続に大きく影響を与えたであろうバンドや、それなりにメタルコアを聴いてきた私が個人的に好きなバンドを中心に紹介していきます。シーン全体の層の厚さではスラッシュ・メタルやデス・メタルをはじめとする他のメタルのサブジャンルには及ばないかもしれませんが、なかなか面白い音楽性のバンドは居ます。



 以下、メタルコア、およびメタルコア好きが気に入りそうな音楽性のバンドを紹介していきます。他のバンドについての紹介文も随時追記していく予定です(ちなみに、近年のエレクトロニカやダブステップの要素を大々的に導入したバンドは私の好みでは無いので、当面は扱わないと思います)。


KILLSWITCH ENGAGE
 メタルコア・シ-ンの中心に位置するバンド。こちらの独立した記事をご覧ください。KILLSWITCH ENGAGE 全作レビュー (オススメの名盤&名曲紹介)


AS I LAY DYING
 メタルコア界屈指の人気者AS I LAY DYINGは メタルコアの持つ快楽原則に最も忠実な楽曲構成を得意とします。すなわち、"メロデス風疾走パート→ややテンポを落として透明感のあるクリーンボイスのサビ→重低音を利かせたシンプルなブレイクダウン"という、多くの人がメタルコアと聴いて連想するものです。とはいえ、彼らの楽曲は執拗にブレイクダウンを導入するのでなく、メロデスやスラッシュメタルの基本に忠実なスピード感を重視した曲も多数あります。

 彼らのスタイルは模倣しやすいのと同時に、誤魔化しが効かない分バンドのセンスがモロに問われます。実際、このように曲展開をこねくり回し過ぎない典型的メタルコアスタイルを貫いて彼らと並ぶ人気を確立しているバンドは意外に少ないものです。メタルコアの王道を行く、基本に忠実なサウンドなので、メタルコアを知るのなら、 真っ先に押さえておくべきバンドでしょう。
 

 3rd以降のアルバムは全て、メタルコアファンなら揃えるべきですが、メロデス寄りの流暢なギターの旋律が冴えるヒット作『Shadows Are Security』は特に馴染みやすい作品でしょう。代表曲The Darkest Nights」が収録されています。4th以降はよりスラッシュメタル/デスラッシュ的爆走感と緩急のついた曲展開を重視しており、個人的には「 A Greater Foundation」収録の『Awakened』が特にオススメです。 

 ヴォーカリストが逮捕されたことにより、現在は無期限活動休止状態。残ったメンバーは新たな ヴォーカルと共にオルタナティブ・メタルバンドWOVENWARを結成しました。

 

ALL THAT REMAINS
 2002年デビューのALL THAT REMAINSは、 性急なテンポチェンジやブレイクダウンはあまり好まず、メタルコアの中では滑らかな曲展開が特徴的です。継ぎ接ぎしたような不自然さの無い"普通に良い曲"を書くところが魅力です。また、画一的なデスボイスとクリーンボイスの使い分けでなく、それぞれの発声法の範疇で確かな表現力を見せつけるフィリップ・ ラボンテの歌唱力はシーン随一。ギターリフに関しても、北欧メロデスバンドの影響を大きく受けつつも、俗に言う"慟哭リフ"とは違う、過剰に感情的になり過ぎないカラッとした質感だと、私は感じます
 

  おすすめ作品は何といっても3rd『The Fall Of Ideals』です。楽曲、演奏ともにメタルコアの決定盤といっても過言ではない作品で、全世界のメタルコアファンが絶対に持っているアルバムです。This Callingは、メタルコアで最も有名な曲でしょう。逆に、それ以外の作品は3rd程の支持を得られておらず、現在の彼らは、「かつての激しさが無くなった」と従来のファンからの支持を失っているのが現状です。個人的には、4th『Overcome』はなかなか良い曲が収録されているのでオススメではあります。彼らの演奏技術やセンスには確かなものがあるので、アグレッションを取り戻すにしろ、より一般向けにシフトするにしろ、いずれにしても起死回生の作品を期待しています。
  

SHADOWS FALL
 97年デビューの古参、SHADOWS FALLは メタルコアに分類されるバンドの中で最もスラッシュメタル寄りで、メタルコアのファンよりもむしろスラッシュメタラーに気に入られるのではないかという音楽性です。彼らの、メロデスとスラッシュとハードコアを足して3で割ったようなバランス感覚には独特なものがあります。また、楽曲の引き出しの多さに関してはメタルコア界でも随一で、曲調がワンパターンという批判は彼らには通用しないでしょう。

 異常に髪が長いヴォーカルのブライアン・フェアの歌唱力のせいか、初期の彼らにはメタルコアにありがちな伸びやかな歌メロが少ないのが特徴です(そういうサビの曲の場合はサイドヴォーカルが代わりに歌っています)。とはいえ、ブライアンのヴォーカル・スタイルを好意的に評価するならば、近年のバンドに多い画一的なものとは異なり、ハードコア寄りのワイルドさ、生々しさがあるのです。好みが分かれますが、好きな人は本当に好きなタイプのヴォーカリストだと思います。また、彼らのギターソロには、テクニカルな速弾き→ツインリードのハモリという、メタラーなら誰でも好きに違いないであろう形式のソロが多いのが特徴です。


  
The Light That Blindsを始めとする、ザクザクとした印象に残るリフが多数収録された4th『The War Within』は多くのメタルファンに受け入れられる音楽性でしょう。ストレートなメタルコアが好きという方には、KILLSWITCH ENGAGEのアダム・デュトキエヴィッチがプロデュースした7枚目『Fire From The Sky』が特にオススメの内容です。歌のメロディとコーラスワークに関しては、彼がかなり監修したと思われる充実度で、ブライアンの歌も非常に上達しています。

 リードギターのジョナサン・ドネイズが2013年にあのANTHRAXに加入したため、現在は活動休止中。
『For All Kings』で彼の事を知ったANTHRAXファンは是非SHADOWS FALLも聴いてあげてください。
 

UNEARTH
 UNEARTHは クリーンボイスを(めったに)用いないメタルコアとしては最も有名なバンドのひとつでしょう。テンポチェンジを多用した緩急自在の曲構成の巧みさでは、多くのエクストリーム・メタルバンドたちにも引けを取りません。リードギターがメロディアスな旋律を多く奏でながらも、甘くなり過ぎない絶妙なバランス感覚は見事。SHADOWS FALLと同じく、メタルコアに偏見がある人にこそ聴いてほしいバンドです。

 2nd『The Oncoming Storm』は、いわゆる"クサメロ"という印象を与える旋律が多いのにも関わらず不思議とイモっぽく無いという素晴らしいバランスの作品です。
Zombie Autopilotは永遠の名曲。3rd『III: In the Eyes of Fire』は、より楽曲が鋭利さを増し、多くのエクストリーム・メタルバンドにとっての課題であるアグレッションとメロディのバランスを高い次元で両立させた傑作。6枚目の『Watchers Of Rule』からは元THE FACELESSのNick Pierceが加入。彼のテクニカル・デス・メタル的な異様な手数のドラミングに触発されたのか、メタルコアの枠を飛び越えた"ブルータル・メタルコア"とさえ形容出来そうな凶暴なサウンドに仕上がっています。こうした方向に変化するバンドは意外に珍しいので、この方向を突き詰めていくなら面白そうです。
 

ARCHITECTS
 2004年にイギリスで結成されたARCHITECTSは、近年のメタルコア・シーンでなかなか高い評価を得ており、個人的にもイチオシのバンドです。詳しくはARCHITECTS 『All Our Gods Have Abandoned Us』のレビューを参照。

PERIPHERY
 プログレッシヴ・メタルやジェントに分類されるバンドで、メタルコアではありませんが、デスボイスとクリーンボイスの使い分けやエモ風の歌メロ等、メタルコア好きなら気に入るに違いないバンドです。詳しくは、『PERIPHERY III: SELECT DIFFICULTY』のレビューを参考にして下さい。

TEXTURES
 ジェントの先駆けともいえる偉大なバンドです。楽曲構成や歌メロにはメタルコア的な要素が多く、メタルコアに分類されることもあります。詳しくは、『PHENOTYPE』のレビューに書いております。

IN FLAMES
 クリーンボイスを導入したメロディック・デス・メタルバンドとして、多くのメタルコアバンドに多大な影響を与えた偉大なバンドです。詳しくはIN FLAMES 『Battles』 レビューを参照。 


SOILWORK
 IN FLAMESと同じく、多くのメタルコアバンドに影響を与えたバンドです。彼らの音楽性については、以下のコラムをご覧ください(ある程度SOILWORKを知っている人向けかもしれません)。
SOILWORKとハードロック (名盤『The Ride Majestic』レビューによせて)